(レポート:片木美穂)
10月21日航空会館で開催された第4回抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会に天野・眞島が参考人として参加しました。片木・桜井・松本が傍聴しました。
この日は関係者へのヒアリングということで、臨床腫瘍学会、乳腺腫瘍の医師、患者会2団体が呼ばれており、それぞれが15分のプレゼンテーションをし、質疑応答に答える形となりました。
いずれの参考人も
・副作用被害救済制度に関して医療の委縮などが起きる懸念
・本当に副作用かどうか証明するのが難しいという懸念
・がん治療は手術や放射線治療なども行うことがありそれらにも死亡するリスクがあること
・ドラッグ・ラグなどの医療の諸問題が悪化するのではという懸念
などなど多くの課題があり、極めて抗がん剤の副作用被害救済制度は難しいのではないかというまとめになっているスライドでした。
驚いたのは委員の質問でした。
傍聴席で思わず腰を上げて誰が質問しているのか座席表と見比べ何度も確認してしまうほど…。
前述の「医薬品等制度改正検討部会」や「がん対策推進協議会」に比べて傍聴者が少なく、マスメディアの数も圧倒的に少なかったのですが、こういう会議こそ傍聴しておかないと、実は当事者が知らない間にとんでもない制度ができてしまうのではないかと危機感を感じる内容でした。
(本当に気になる方は是非とも議事録が出たら見てほしいと思ってます)
特に気になったのは、制度で救済される人の「線引き」について口にする委員が居たことでした。
もちろん、検討する会議なのでそういう意見が出ることはわかるのですが、
例えば化学療法を術前に受けるのか、受けないのかで線を引けば、手術のない血液がんや、そもそも発見時に進行がんであることの多い卵巣がんや膵臓がんなどはどうなるのか…たまたま手術室が空いてなくて術前化学療法をやると決断された患者さんと、同じ条件で手術を先にした患者さんとの違いはという話になってきます。
また、同じ化学療法なのに初発と再発とで本当に差をつけていいのか、じゃ初回化学療法でマーカーが下がりきらずに再燃したらどうなるんだ?
骨髄移植のために大量化学療法をする患者さんは?多くが適応外で治療を受けている小児や、減量をして治療を受けている高齢者や合併症がある患者さんは?
昨日の各参考人のヒアリングを聞いて、その線引きが無理であろうこと、線引きをすればむしろその線引きを巡って訴訟が多発するのではないかと思いました。
また、委員の中には、「副作用被害救済制度」ができれば訴訟が減ると頭から信じて疑わない委員がいるのではないかと感じました。
それに関しては医療者委員も指摘していましたが免責が無い日本でそれはむしろ逆の方向に行くのではないかと思ってます。
がんは治療をしなければ、多くの場合はやがて進行して命が失われます。
また再発した場合は多くの癌が、化学療法を繰り返し、うまくがんとうまく付き合って生きていくことになります。
薬には副作用はあります。
私たちは、医師からリスクとベネフィットの説明を聞き、治療を選択する権利もあれば、治療をしない権利もあります。
末梢血幹細胞移植を受ける血液がんの患者さんのように、その治療を受ければ生きられる可能性もあれば、高い関連死の割合、後遺症の割合を知ってそれでも受ける患者さんがいます。
天野参考人がいったことが胸に残りました。
「健康被害を受けた後のことを議論するより、有効で安全な治療を受けられるよう必要な制度設計をしていくことを期待したい」
副作用被害救済制度に関しては作ることを前提ではなく、また線引きをするのではなく、本当にそれが患者さんのために必要なことなのかを考えていただければと思っていますし、多くの国民にもこの議論に関して興味を持っていただきたいと思ってます。