2011年10月23日日曜日

第7回医薬品等制度改正検討部会

(レポート:片木美穂)

10月19日水曜日18時~20時まで厚生労働省で開催された医薬品等制度改正検討部会に片木が委員として出席させていただきました。J-CANからは天野と桜井と眞島が随行者として同席しました。

この日、事務局から、今後の薬事法改正の主たる改正のポイント案が提示されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001s5dh-att/2r9852000001s5i0.pdf

がん対策推進協議会でも要望が出ているコンパッショネートユースに関しては、治験に入った医薬品を、治験に入る基準に該当しない(すでに他に代替となる治療が無い)患者さんに対してという縮小的な提案であり、名称も「アクセス制度」となっていました。

コンパッショネートユースは欧米各国でも基準がばらばらであり、日本は日本の薬事行政を睨んでオリジナルの制度が必要だという風に感じています。
日本製薬協の長野委員からも「別途詳細を決める検討会が必要では」という意見もありました。
ただし、方向性としては、このタイミングで薬事法として示さねばならないと思うので方向性として上がってきて良かったと思っています。

しかし実際にコンパッショネートユースなどに関しては細かいところまで議論することはできませんでした。

この日も、第5回に引き続き数日前に薬害被害者のみなさまと面談したという小宮山厚生労働大臣がご挨拶に見えられました。
「薬害肝炎検討会の最終提言を真摯に受け止め、二度と薬害が起きないように、できることころから実施していく。先週、薬害肝炎原告団と話した際には、最終提言に関して強い思いを感じて受け止めた。またドラック・ラグ、デバイス・ラグなどについても審査体制の充実などを進めていく。検討部会の提言を最大限に踏まえ、来年の通常国会への法案提出を目指していく」というご挨拶をうけ、身が引き締まる思いがしましたが、議論の論点は、第5回、第6回に引き続き「添付文書の承認事項化」と「医薬品行政を監視する第三者機関」のお話し…。

薬害を起こしたのが「薬」であれば、患者さんの命をつなぐのも「薬」。
日本は世界でも数少ない創薬国であり、日本発の医薬品を生み出すには、「患者の安全を守る」議論と並行して「患者がどこまで副作用を受け入れるのか」といったところも考えなければなりません。もちろん「薬害」はあってはなりませんが、100%安全というお薬はありません。

薬事法は、この改正を機に話し合わなければならない課題はたくさんあります。
医療機器が医薬品と同じ基準でいいのか、再生医療やゲノム創薬など今後の医薬品開発の承認審査はどうするのか、医師主導治験やベンチャー企業の治験が進むために審査料などについてどうするのか、市販後全例調査の徹底や、予期せぬ副作用が発生した時に患者さんや医療者に周知するスキームはこれでいいのか、オーファンドラッグやウルトラオーファンドラッグの基準はどうするのか、行政刷新で廃止が決まった基盤研の機能が厚生労働省に戻って本当に医薬品行政が立ちいかないという事態にならないのか…
正直、残された会議の回数を考えると、それらに関して委員間で議論がなされていないことに身を切られる思いでいます。

最近はこの件で、がん患者会だけではなく、難病の患者会の方からもお電話やメールでご要望をいただくこともあります。
何とか議論の取りまとめができ、いい改正になったと言っていただけるよう、頑張りたいと思います。

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