2012年1月31日火曜日

がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう 003次期基本計画の議論がはじまるまで

あっという間に1月も最後の日になってしまいましたね。
明日は16時より「第31回がん対策推進協議会」が開催されます。
朝から中央社会保険医療協議会(中医協)も開催されるのでハードな一日ですが傍聴頑張りたいと思います。(中医協は傍聴券がもらえたら…ですが、もらえなかったら議員会館のロビイングでもするとしましょう。)

さて、002回の「患者委員の位置付けについて」で推進協議会にいる患者委員のみなさんは、がん対策のなかで、どのようなことを期待され、協議会で活躍されているかをご紹介しました。

しかし、患者委員というのは上膳据膳で委員をされているのでありません。

厚生労働省において、法的な位置付けで患者の声が反映されるよう求められている協議会は未だ少なく、歴史が浅いゆえ、患者委員の苦労も多いようです。
それなのに、協議会に対して世間の関心も薄く、傍聴席にいる患者さんも限られているような気がします。

そこで、「次期がん対策推進基本計画」の議論が始まるまで、患者委員のみなさんが努力されてきたのか、私の主観的なレポートではありますがご紹介させていただきたいと思います。



今年の1月27日衆議院本会議でがん対策推進協議会についてのやり取りがあったことはすでにこのブログでも報告させていただきました。

本会議の中で話題となった「中間報告」。
2010年10月6日に開催された「第14回がん対策推進協議会」の委員提出資料によると、中間報告は協議会の委員の意見を羅列しただけの不完全なものであるとされ、2007年に策定され運用されてきた基本計画を見直し、評価をし、より良いものにしていく視点に乏しいものであると厳しく糾弾されています。
また、002回のときに示させていただいたように、国は「がん対策基本計画」に沿って国のがん対策を行うべきであるにも関わらず、この年の予算の時期に、がん対策推進協議会が開催されず、協議会のあり方を、厚生労働省が軽視していることへの怒りも読みとれます。

実際に、がん対策推進協議会は13回が開催されたのが2010年5月、そして14回が10月ということで、「がん対策推進基本計画」に則って国のがん対策が進むはずなのに、そのための予算要求をする大事な時期に協議会が開催されていないことがわかります。

もちろん協議会の運営規定(会議の開催方法など)では協議会は会長が招集するものであることから、会長が招集しなかったということなのかもしれませんが、この空白の時間は、あまりにも不自然です。
患者委員らの抗議は当然のことと思われます。

しかしその思いに反して残念なことが続きます。
この抗議が出された、第14回は、協議会が3時間の予定であったにも関わらず、会長の都合という理由で、突然協議会が2時間で終了してしまったのです。

私も別の協議会の傍聴のあと駆けつけたのですが、怒りと戸惑いが入り混じったような表情で会場から出てこられる委員のみなさんの様子を見て驚いたのを鮮明に覚えています。

患者委員のみなさんはそのあと、埴岡氏がやっていたワーキングがあるということだったので、私はひとりその足で、永田町の議員会館に向かい、議員に対して状況を報告させていただきました。
その話を聞いた、当時の仙谷官房長官側から「詳しく状況を聞かせていただきたい」と連絡があり、患者委員であり、会長代理も努められている天野さんと二人で総理大臣官邸に伺い、協議会の運営について報告をさせていただきました。
初めての総理大臣官邸で緊張はしましたが、国民のためにぜひとも改善をお願いしたいとしっかりと官邸側にお伝えしました。

また、議員会館にも何度も何度も足を運びお力添えをお願いした結果、2010年11月15日、衆議院予算委員会で公明党の富田茂之議員より細川律夫厚生労働大臣に対して質問をしてくださると連絡がありました。
その日は議会が紛糾し、何度も中断がありハラハラしましたが、「がん対策は患者の声を聞いて行うべきだ」として、運営のあり方を見直すよう求める意見に対して大臣は「基本計画の見直し、政府のがん対策の施策(立案)に向けて精いっぱい、意見を聞く」と回答されました。(詳細記事

そして開催された第15回のがん対策推進協議会。
当日配布された資料では、垣添会長からも患者さんの声を聞き事務局運営をされたしという旨の要望がだされており、また冒頭に健康局長が改めて一連の協議会運営について謝罪をされました。
これで、この先は患者委員のみなさんの声が反映され、次期基本計画策定に進んでいくものとホッと胸をなでおろしました。

しかし、その会議のなかで患者委員のうちのおひとりから協議会会長に対して解任動議が出されるという事態がおきました。
もちろん、協議会の開催や運営に関して会長に課せられた任は重いのではありますが、大臣が謝罪し、局長が謝罪し、さらに協議会長自らも意見を出されている中での解任動議は信じられず、目の前のことが悪夢のように感じられました。
あとからわかったことですが、他の患者委員もこの解任動議の件を知ったのは直前で、止めることもできなかったとのことでした。(詳細記事

結果、解任動議は否決されはしましたが、14回の協議会からの1カ月、患者のためのがん対策推進協議会になるようにとご尽力くださった多くの方の思いを裏切るような事態が起きたことで協議会が空転したことは非常に残念でした。
国会議員の先生方からも厳しい叱責を受けたのは言うまでもありません。
朝日新聞や日経新聞でもこの件は取り上げられ、解任動議を出した患者委員だけでなく、他の患者委員も周囲にあたられ辛い思いをしたということを聞き残念で仕方がありませんでした。

そんななかでも、4人の患者委員のみなさんは協議会の再開にご尽力されました。
地方の委員のみなさんは何度となく東京に往復されたと聞いており、ただただ感謝で頭が下がる思いでした。その結果、16回の協議会は垣添会長が戻ってこられ再開されることになりました。

協議会では、委員からの要望をうけ、小児・緩和・研究の3つの専門委員会が立ちあがることがきまり、2010年12月から、次期がん対策推進基本計画のための議論が開始されました。
そこから先は、かなりハードなスケジュールで協議会が進行されているのは以前の記事でご紹介した通りです。

また自民党の尾辻秀久先生が、民主党の梅村聡先生を事務局としてがん議連を復活してくださるという連絡が入り、当日傍聴していた中医協から急きょ議員会館へ向かい立ち会わせていただきました。(詳細記事

中間報告や2010年の予算に関しては意見が反映されず残念ではありましたが、「次期がん対策推進基本計画」では患者さんのためになるよう議論をしてほしい!という、患者委員の思いから、現在の議論に繋がっていることを知っていただけたらと思います。




003回のポイント:「次期基本計画の議論がはじまるまで」
  1. 次期がん対策推進基本計画の議論がはじまるまでの背景には「患者の声を聞いて国のがん対策を進めてほしい」という患者委員の熱い思いがある
  2. 2010年11月15日の衆議院予算委員会で厚生労働大臣が「基本計画の見直し、政府のがん対策の施策(立案)に向けて精いっぱい、患者の意見を聞く」という発言をされている。
  3. 明日(2011年2月1日)の第31回のがん対策推進協議会において、次期がん対策推進基本計画素案が出される予定であるが、2010年12月から15回にわたっての協議の中で患者が求めた声が反映されたものであることが期待される
  4. ↑患者の声を裏切ったものであれば、大臣の約束はなんだったんだということになりかねませんね(これは筆者の心の声です)
(J-CAN事務局 片木美穂)



がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう過去記事
000 スタート
001 範囲を考えよう
002 患者委員の位置付けについて