2012年1月27日金曜日

がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう 002患者委員の位置付けについて

001回「範囲を知ろう」から、半月ばかり経過してしまい申し訳ありません。

昨年3月~12月まで私が委員をさせていただきました「厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会」。
その意見を取りまとめた「最終版」が1月16日に事務局である厚生労働省より送られてきたのですが、委員として納得しがたい内容になっており、1月24日までそちらの調整に集中させていただいておりました。
調整の結果、同検討部会開催の柱のひとつである「ドラッグ・ラグの解消」部分について、患者の思いを汲んだ取りまとめにしていただきました。
お時間のあるときに【こちらをクリック(pdf形式)】してお読みいただけたらと思います。

このように厚生労働省の複数の審議会には、患者・家族の立場から委員になり、みなさんの思いを国へ繋げてらっしゃる方もいるのですが、なかなかその発言内容や活動はみなさんのもとに届いていないと思います。
そんなこともあり、「がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう」の002回は、がん対策推進協議会の患者委員についてお話ししたいと思います。


がん対策基本法には
第十九条 厚生労働省に、がん対策推進基本計画に関し、第九条第四項(同条第八項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、がん対策推進協議会(以下「協議会」という。)を置く。
第二十条 協議会は、委員二十人以内で組織する。
2 協議会の委員は、がん患者及びその家族又は遺族を代表する者、がん医療に従事する者並びに学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。
3 協議会の委員は、非常勤とする。
4 前三項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
と記載されています。

この文章だけ読むとややこしいと思うのですが

第19条には、第9条の4項に書かれている「厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成しようとするときは、関係行政機関の長と協議するとともに、がん対策推進協議会の意見を聴くものとする。」という事項を行うべく、がん対策推進協議会を置きなさいと書いてあります。

第20条には、委員の数は20人以内、患者・遺族、医療者、有識者から委員を選びなさい、そのほかの細かいことは政令で定めなさいと指示しています。

つまり、がん対策推進協議会には20人以内の委員を置き、「患者・遺族」「医療者」「有識者」からなる人が委員に名を連ね、がん対策推進基本計画案を作成していく時には意見を聴くよう定められています。

またがん対策基本法の附帯決議において
三、「がん対策推進協議会」の委員構成については、がん患者が初めてがん医療の政策立案過程に参画できるようになったことの意義を重く受け止め、がん患者の意向が十分に反映されるよう配慮すること。
となっており、患者・家族の意向が基本計画の中に十分反映されるよう配慮することが求められています。

がん対策推進協議会には運営に関して協議会令(任期や会長の選び方)運営規定(会議の開催方法など)が定められており、それに則って協議会が開催されています。

これらを踏まえると、がん対策推進協議会に召集された「患者・家族の立場の委員」の意見は、5カ年のがん対策推進基本計画を作成していくうえで尊重され、計画という形になった上で、がん医療の今後のあり方に大きく関わってくるため、私たち患者・国民にとって極めて重要な意味を持つのではないでしょうか。

今後の5カ年(2012年6月~)の基本計画については2010年12月の第16回の協議会より話し合われており、下記の方々が患者・家族の委員として意見出しをされています。

2期(~第19回協議会まで)
天野 慎介さん(特定非営利活動法人グループ・ネクサス理事長)
郷内 淳子さん(カトレアの森代表)
前川 育さん(特定非営利活動法人周南いのちを考える会代表)
三好 綾さん(特定非営利活動法人がんサポートかごしま理事長)
安岡 佑莉子さん(特定非営利活動法人高知がん患者会一喜会会長)
3期(第20回協議会から)
天野 慎介さん(特定非営利活動法人グループ・ネクサス理事長)
花井 美紀さん(特定非営利活動法人ミーネット理事長)
前川 育さん(特定非営利活動法人周南いのちを考える会代表)
眞島 喜幸さん(特定非営利活動法人パンキャンジャパン理事)
松本 陽子さん(特定非営利活動法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長)
専門部会
・緩和ケア専門委員会(2011年1月~8月まで計7回)
前川 育さん(特定非営利活動法人周南いのちを考える会代表)
・小児がん専門委員会(2011年1月~8月まで計7回)
天野 慎介さん(特定非営利活動法人グループ・ネクサス理事長)
小俣 智子さん(武蔵野大学人間関係学部社会福祉学科教授)
馬上 祐子さん(小児脳腫瘍の会副代表)
※専門委員会は「学識経験を有する者」を置くことが定められており、患者・家族を委員とすることは定められていません。そのためがん研究専門委員会には患者はいません。
※小俣さんは「小児がんプロジェクトMNプロジェクト」の代表をされています。

002回のポイント:「患者委員の位置付けについて」
  1. がん対策基本法、関連する取り決めのなかでがん対策推進基本計画を策定する上において「患者・家族の委員の意見を尊重し十分反映すること」が求められている。
  2. 専門委員会においては患者・家族が委員になることは定められていない。
  3. 患者・家族の委員は委員の発言ひとつひとつが政策に反映される意識を持ち、私たち一般の患者、国民に対して影響があるということを意識して協議会に臨んでほしい(これは法で定められたわけではないが、法や関連事項を読んで筆者が期待することである)
(J-CAN事務局 片木美穂)



がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう過去記事
000 スタート
001 範囲を考えよう