2012年3月20日火曜日

がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう 008分野別施策 子宮頸がん予防ワクチン

お待たせしました。
では具体的に「次期がん対策基本計画」の気になるところを解説していきたいと思います。

最初は霞ヶ関用語が一番わかりやすい部分を解説したほうがいいと思うので、「子宮頸がん予防ワクチン」について取り上げます。

分野としては「4.がんの予防」になります。
基本計画の個別目標の部分は、主に(現状)(取り組むべき施策)(個別目標)の3つの段落からなっています。
  • (現状)これまでの状況、現在の状況
  • (取り組むべき施策)具体的に施策として何をしていく必要があるのか
  • (個別目標) …取り組むべき施策をおこなうことで何を達成することを目標にするのか
と思ってもらっていいかとおもいます。

  



(現状)22ページ一番下の段落
また、ウイルスや細菌への感染は、男性では喫煙に次いで2番目、女性では最もがんの原因として寄与が高い因子とされている。例えば、子宮頸がんの発がんと関連するヒトパピローマウイルス(以下「HPV」という。)、肝がん
と関連する肝炎ウイルス、ATLと関連するヒトT細胞白血病ウイルス1型(以下「HTLV-1」という。)、胃がんと関連するヘリコバクター・ピロリなどがある。この対策として、子宮頸がん予防(HPV)ワクチン接種の推進、肝炎ウイルス検査体制の整備、HTLV-1の感染予防対策等を実施している  

(取り組むべき施策)23ページ真ん中より下の段落
感染に起因するがんへの対策のうち、HPVについては、子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの普及啓発、ワクチンの安定供給に努めるとともにワクチン接種の方法等のあり方について検討を行う。また、引き続き子宮頸がん検診についても充実を図る。肝炎ウイルスについては、肝炎ウイルス検査体制の充実や普及啓発を通じて、肝炎の早期発見・早期治療につなげることにより、肝がんの発症予防に努める。また、B型肝炎ウイルスワクチンの接種の方法等のあり方について検討を行う。HTLV-1については、感染予防対策等に引き続き取り組む。ヘリコバクター・ピロリについては、除菌の有用性について内外の知見をもとに検討する。
(個別目標) ※24ページ冒頭
喫煙率については、平成34(2022)年度までに、禁煙希望者が禁煙することにより成人喫煙率を12%とすることと、未成年者の喫煙をなくすことを目標とする。さらに、受動喫煙については、行政機関及び医療機関は平成34(2022)年度までに受動喫煙の機会を有する者の割合を0%、職場については、事業者が「全面禁煙」又は「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」のいずれかの措置を講じることにより、平成32(2020)年までに、受動喫煙の無い職場を実現することを目標とする。また、家庭、飲食店については、喫煙率の低下を前提に、受動喫煙の機会を有する者の割合を半減することにより、平成34(2022)年度までに家庭は3%、飲食店は15%とすることを目標とする。
また、感染に起因するがんへの対策を推進することにより、がんを予防することを目標とする。
さらに、生活習慣改善については、「ハイリスク飲酒者の減少」、「運動習慣者の増加」、「野菜と果物の摂取量の増加」、「塩分摂取量の減少」等を目標とする。
となっています。



つまり、まとめると「子宮頸がん予防ワクチン」の問題については

  • (現状)「子宮頸がん予防ワクチンの接種推進を実施している」
  • (取り組むべき施策)「HPVについては、子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの普及啓発、ワクチンの安定供給に努めるとともにワクチン接種の方法等のあり方について検討を行う。また、引き続き子宮頸がん検診についても充実を図る。」
  • (個別目標)「感染に起因するがんへの対策を推進することにより、がんを予防することを目標とする。 
となっています。

パッと見、よさそうな施策に感じますが問題はここです。
  • (取り組むべき施策)「HPVについては、子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの普及啓発、ワクチンの安定供給に努めるとともにワクチン接種の方法等のあり方について検討を行う。また、引き続き子宮頸がん検診についても充実を図る。」
つまり、
  • ワクチンの普及啓発やります。
  • ワクチンの安定供給努力します。(筆者注:以前、助成がついたときにワクチンが足りなくなった)
  • そのほか接種の方法や、あり方については検討します。
もう勘のいい方は気付かれたでしょう。

つまりこういうことです。(ちょっと過激な記事ですが

これまで、子宮頸がん予防ワクチンはさまざまな団体の働きかけなどにより公費助成がなされてきました。
2月7日の参議院予算委員会でも三原じゅんこ議員(自民党)の追及に、小宮山大臣はサラッと「これまでと変わらない」と言っていましたが、がん対策推進基本計画では「あり方については検討」となっています。

これは現在進行している「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会」の議論を睨んでいるとはおもいますが、「公費助成については約束されていない」ということです。
いざ、公費助成がなくなったときに騒いでも、がん対策推進基本計画では約束されていないためひっくり返すのは難しくなると思います。

もちろんワクチンについては費用対効果の面からどうかも考える必要があります。
現在予防できるHPVの型は限られていますが、今後その型は増えるべく開発が進んでいます。
公費を切られることは、少なくとも接種する女児の数へも影響するでしょうから、そういう研究開発の面にも影響を与えるかもしれません。

なんとなくわかっていただけましたでしょうか?

では、具体的にパブリックコメントにはどう書いたらいいでしょう。

  


いきなり本文欄に「子宮頸がん予防ワクチンについては…云々」と書きなぐるのもありではありますが、頭のいいお役人はお作法にこだわりますので、基本的にはお作法に則った書き方をする方がいいでしょう。
(時間がない時はイチイチ細かく書けないので普通に書きなぐってもらっていいです。)
あくまでも筆者ならこう書くということでの参考文章です。
がん対策推進基本計画(変更案)/分野別施策/4.がんの予防(p22~p24)について
(取り組むべき施策)では、子宮頸がん(HPV)予防ワクチンについて、普及啓発および安定供給については具体的に記載されていますが、公費助成については継続を望みます。また基本計画に公費助成の継続明文化を求めます。
国立感染症研究所の発表した「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)」によると子宮頸がんは年齢別にみた子宮頸癌罹患率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後、横ばいになる。近年の日本の子宮癌罹患者数の推移では、39歳以下での罹患者数の増加が認められるとされ、若年者がかかるがんであり、予防・検診が不可欠だと考えます。しかし、子宮頸がん予防ワクチンは高額であり、摂取したくても負担が大きいことから、現状どおり公費助成が継続されることを望みます。
みたいな書き方でどうでしょう…。
つまり
  • 1段落目:項目、ページ
  • 2段落目:結論
  • 3段落目:理由
で簡潔に書きます。
理由の部分ですが、今回、ブログに書くのでややこしいこと書きましたが、普通に「あんな高いワクチン娘が2人いる我が家では打てません!」でいいと思います。
今回、一番わかりやすそうな部分を取り上げて、お作法含めて書きましたが、次回はもうちょっと簡潔に進めていきたいです(疲)。
 

追伸

個人的にはこのこの署名提出時に私も帯同しておりまして、記事および写真をじっくり見れば分かる通り、小宮山洋子議員も紹介議員として帯同していたわけです。
http://lohasmedical.jp/news/2010/07/21133723.php
それが彼女が大臣時代に、梯子を外すような方向に舵を切るとは…。ついついボヤキたくもなります。
大臣、あんたの信念どこにありますねん。(失礼)

(J-CAN事務局 片木美穂)