2012年3月22日木曜日

がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう 009 分野別施策 希少がん

はい、今日もわかりやすいところで「希少がん」について取り上げます。

希少がんについて「がん対策推進基本計画(変更案)」には次のように記載されています。

1.がん医療
(6) その他(18ページ~19ページ
(現状)希少がんについては、様々な希少がんが含まれる小児がんをはじめ、肉腫、口腔がんや成人T細胞白血病(以下「ATL」という。)など、数多くの種類が存在するが、それぞれの患者の数が少なく、専門とする医師や施設も少ないことから、診療ガイドラインの整備や有効な診断・治療法を開発し実用化することが難しく、現状を示すデータや医療機関に関する情報も少ない。
(取り組むべき施策)希少がんについては、患者が安心して適切な医療を受けられるよう、希少がんに関する標準的治療の提供体制、情報の集約・発信、相談支援、研究開発等のあり方について、希少がんが数多く存在する小児がん対策の進捗等を参考にしながら検討する。

(個別目標)希少がんに対しては、臨床研究体制の整備とともに個々の希少がんに見合った診療体制のあり方を検討する。






すでに口酸っぱく申し上げていますが、がん対策推進基本計画は今後5年間の国のがん医療で特にどういうことに重点的に取り組んでいくかを示した計画であるわけです。

昨日3月20日に読売新聞にがん対策推進協議会長の門田先生や私のインタビューが掲載されました。その中で、私は小児がん対策について項目が盛られたことに対しては評価をしました。
やはり小児がんは大人と同じ対策をしていては良くないと思ったこと、これまでまったくもって施策が手つかずだったことなどから当然のことだと思っています。

しかし一方でこの希少がんについては問題があると思っています。


●1点目 希少がんの定義

まず、(現状)ですが、これは希少がんの方たちが置かれている現状をきちんとあらわしています。
ただ、気になりませんか?
希少がんはどのがんまで入るでしょう。

もちろん5大がん(肺がん・胃がん・肝がん・大腸がん・乳がん)は違いますよね。
では
年間22,000人ほど罹患するといわれる膵臓がんは?
年間15,000人ほど罹患するといわれる子宮頸がんは?
年間8,000人ほど罹患するといわれる卵巣がんは?
じつは、定義はないわけです。

ご存じのように膵臓がんはドラッグ・ラグに苦しんでいます。
医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議には、膵臓がん治療薬としてイリノテカンなど他のがんでは20年以上前に適応追加されているようなお薬が必要だという要望が出されています。
5大がん以外はどこかとりのこされている希少がんだなんていう患者会のリーダーもいるくらいです。

ただ、この線引きをはっきりさせることはいいこともあれば悪いこともあります。
例えば、希少がんを1万人以下としたならば、いざ基本計画が実行された時には、卵巣がんはもしかしたら恩恵を受けるかもしれないことがあっても、膵臓がんはダメみたいなことがでてきます。

みなさんはこの点をどう考えますか?


●2点目 小児がん対策の進捗を参考にしながら検討する

2点目が、(取り組むべき施策)ですが、これは希少がんの問題を解決するために何をするのかという具体的な中身です。

私は先に「読売新聞で出した評価」として、大人のがんと違うという背景から小児がんをはっきり打ち出したことを評価したと書きましたが、希少がんはなんでか「小児がんの後追い」にされてます。

一瞬、小児がんがこれからガンガン進んでいって、それに追随するかのような印象を与えますが、これがまさに「霞ヶ関トラップ」です。

小児がんのことを簡単に話すと、実は患者(患児)さんが少ないことからある程度の集約化も必要とされ、小児がん拠点病院(仮)の検討会がこれから立ち上がります。
その予算にもすったもんだあって、最初6億といってたのが、昨年末の政治のごたごたに便乗されいきなり2.5億に減らされるという情報がある筋から飛び込んできました。
慌てて患者委員の天野さんと私とでロビイングをして国会議員の先生方のご助力もあり4億にまで押し戻しましたが4億で何が進むのか…まだまだ予断を許さない状況であると思っています。
また、小児がんは血液がんが多いことや、病気の予後も大人のそれとは違う。また院内学級の問題や兄弟児の問題など検討されていく内容はやっぱり小児特有のものも多いような気がします。

その「進捗を参考にしながら検討する」という言葉を前向きにとらえれば「希少がん拠点病院」作る方向にこれから5年で検討していくのかな…ともとれるのですが、「小児がんの進捗が遅ければ後回しだよ」ともうけとれるわけです。
また、「検討する」とは明記されていますが、小児がんが「がん対策推進協議会」に公的に設置される「専門委員会」であったように、「希少がん専門委員会」が立ちあがるようなことも明示されていません。

(個別目標)のところも同様ですね。
検討するって「どのレベル」で検討するかがまるきり明示されていないのです。


よさそうなことを書いているのに、良く読むと何もやらないと書いている。
まさに、これが「霞ヶ関トラップ」(しつこいっ!)。

みなさんどう思いますか?


パブコメにはどう書くかという筆者の案ですが、
がん対策推進基本計画(変更案)/分野別施策/1.がん医療(6)その他(p18~p19)
●1点目
(現状)の希少がんについて、希少がんの定義をどうなっているのか示してください。5大がんは肺がん・胃がん・肝がん・大腸がん・乳がんのことを指し示すことが国民にも理解されていますが、希少がんについては年間発症人数が何人のがんを示すのかなど具体的な根拠が乏しく、そのことが希少がん対策について具体的な政策に繋がらないのではないかと危惧しています。
●2点目
(取り組むべき施策)(個別目標)については、「希少がん専門委員会を設ける」ことを示してください。小児がんの進捗を踏まえての検討とされていますが、小児がん対策については拠点病院などはこれからきまっていくことであり、5年かけて進められていくことと思います。それを待って希少がんの検討がされることでは遅いと感じてしまいます。
例えばがん対策推進協議会の下に「小児がん専門委員会」が設けられ、問題をあぶりだし、対策の案が出されたように、希少がんについても「専門委員会を設け」具体的に問題点をあぶり出し検討をはじめることが必要だと考えます。
実際に希少がんでこういう問題に困ってる!というエピソードなども簡単に添えておくとさらに意見に厚みが増すかもしれません。

ただ、いわゆるイチャモン療法系などの話を出すと、「あぁこの人は何でもやれりゃいい科学的根拠に乏しい人やね」と一蹴されるので、きちんとした現実的な提案をされることをお勧めします。