2012年3月27日火曜日

がん対策推進基本計画の改定を患者目線で考えてみよう 010 がん登録

がん登録については、がん対策基本計画1期でも掲げられていますが、各都道府県の事業であるため実施もばらつきもあり、課題が多い問題です。

地域がん登録は欧米などでは制度化されています。
がん登録することで、がんの
  • 罹患数
  • 罹患率
  • 生存率
  • 治療効果の把握
  • がんの地域性
などを把握することができます。
がん登録を分析することで、本当に必要ながんの対策が打ち出せます。

例えば、治療成績がわかれば、どうして差が出るのかということを考え、治療成績向上を目指すことで医療の質を上げていくことができます。

また、ドラッグ・ラグの問題を解決するにあたっても、果たしてその治療を必要としている患者さんがどれだけいるのかというニーズを把握することもできます。

日本では希少がんにおいて罹患者数などもきちんと把握されていないために現状把握が難しく対策が講じられていないこともあります。

がん登録と聞いても「患者にとって何の役に立つの?」と思われがちですが、日本の現状、地域の現状、医療機関の現状を把握し対策を打ち出せるという意味で、患者さんのために返ってきますし、がん治療の向上に必要であることはわかっていただけるかと思います。

いっぽうで、がん登録が国民に正しく理解されなかったり、個人情報の保護をきちんと打ち出せないと日本でがん登録をきちんと法的な位置付けで行うのは難しいと思います。

では、がん対策基本計画(変更案)ではどうなっているのでしょう。


(取り組むべき施策) p21
  • 法的位置付けの検討も含めて、効率的な予後調査体制を構築し、地域がん登録の精度を向上させる。また、地域がん登録を促進するための方策を、既存の取組の継続も含めて検討する。
  • 国、地方公共団体、医療機関等は、地域がん登録の意義と内容について周知を図るとともに、将来的には検診に関するデータや学会による臓器がん登録等と組み合わせることによって更に詳細にがんに関する現状を分析していくことを検討する。
  • 国立がん研究センターは、拠点病院等への研修、データの解析・発信、地域・院内がん登録の標準化への取組等を引き続き実施し、各医療機関は院内がん登録に必要な人材を確保するよう努める。

(個別目標)p21
5年以内に、法的位置付けの検討も含め、効率的な予後調査体制の構築や院内がん登録を実施する医療機関数の増加を通じて、がん登録の精度を向上させることを目標とする。
また、患者の個人情報の保護を徹底した上で、全てのがん患者を登録し予後調査を行うことにより、正確ながんの罹患数や罹患率、生存率、治療効果等を把握し、国民、患者、医療従事者、行政担当者、研究者等が活用しやすいがん登録を実現することを目標とする。
 はい、これもパッと読むと「がん登録」は検討されて進むんだと思うのですが、ここまで9回の連載を呼んできた方はわかりますね。「検討する」は「検討する」でしかないんです。
たとえば、がん対策推進協議会で
○委員A「がん登録どうするんですか?」
○事務局「委員の意見も踏まえて事務局に持ち帰り検討しています」
というやり取りも検討といえば検討です。
そうじゃないですよね、私たちとしては具体的に実行してもらうことが大切です。
現在、東京都などは未だにがん登録を実施していません。
都道府県バラバラでは、分析ができない。
かといって一緒にするには法制化も含めた検討が必要。
そして、こんな大切なものをいつまで「検討」なんだ…と。もうこの5年で実行してほしいと思いませんか?
では、がん登録についてどういう意見を出すといいでしょうか。
がん対策推進基本計画(変更案)/分野別施策/3.がん登録(p21)
がん登録について法制化を検討する場を設けてください。
がん登録は、日本のがん罹患者数、罹患率などが正確に把握でき、今後のがん医療の向上、がんにまつわる政策に繋げることができる大切なものです。
しかし実施していない都道府県も未だにあり、都道府県に任せていては進みません。
国がリーダーシップを持って行うことを明確にし、これまで進まなかったがん登録をすすめるためにも(取り組むべき施策)(個別目標)においては「法的位置づけを検討する」ではなく「法制化を検討する場を設け、法制化を実施する」ど明示してほしい。
というようなのでどうでしょう。
検討するではなく、実行する、実施する…が大切です。